力学

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力学の世界観

宇宙の大局的な観測によれば、我々の宇宙は3次元ユークリッド空間であり、一様・等方な空間の中で一様な時の流れの下での極めて多数の質点の運動が自然現象であると考えられている。

これらの運動は質点同士の相互作用により変化し、空間的・時間的にも局所的に定まると考えられている。

そのため、自然現象を記述す言語として、微分法が用いられる。

空間の一様性

空間の任意の移動に対して、空間自体に何の違いもない不変性

空間の等方性

空間における任意の回転に対し、空間自体に何の違いもないという不変性

時間の一様性

時間の移動に対し、時間の流れ方に違いがないという不変性

運動方程式:粒子の運動の因果律

$$m\frac{d^{2}\bf r}{dt^{2}}\it =\bf F$$

慣性質量と重力質量

運動方程式より、

$$\frac{d^{2}\bf r}{dt^{2}}\it =\frac{\bf F}{\it m_{\scriptsize I}}$$

と書けることから、\(\it m_{\scriptsize I}~\)が大きいければ、同じ外力に対する加速度(速度の時間変化)は小さくなる。

このとき、\(\it m_{\scriptsize I}~\)を慣性質量と定義する。

慣性質量は運動の状態変化のしにくさを表す。

対して、

$$F_{\small z} = m_{\scriptsize G}g$$

重力は質量\(~m_{\scriptsize G}~\)に比例する。

このような質量\(~\it m_{\scriptsize G}~\)を重力質量と定義する。

重力加速度\(~g~\)は地球の重力質量とその分布により決まる比例定数である。

代入してみると、

$$\frac{d^{2}z}{dt^{2}}\it = \frac {\it m_{\scriptsize I}}{m_{\scriptsize {G}}}g\it ∝\frac {\it m_{\scriptsize I}}{m_{\scriptsize G}}$$

これまで、みてきたように慣性質量と重力質量は実は全く異なる概念である。

しかし、現在の理論の枠組みでは慣性質量と重力質量は等価であることが知られている。

$$\it m_{\scriptsize I}= m_{\scriptsize G}=m$$

そのため、

$$\frac{d^{2}z}{dt^{2}}\it =g$$

となり、概念として区別する必要がない場合は「質量」と表記する。

運動方程式から物理量を定義する

運動量の定義

運動方程式

$$m\frac{d^{2}\bf r}{dt^{2}}\it =\bf F$$

を書き換えると、

$$\frac{d}{dt}\left(m\frac{d\bf r}{dt}\right)\rm=\bf F$$

このとき

$$\bf p\rm :=m\frac{\it d\bf r}{\it dt}=m\bf v$$

を運動量と定義する。

$$\frac{d\bf P}{\it dt}\it = \bf F$$

$$d\bf P\it =\bf F~\it dt$$

両辺を時間で積分すると、

$$\int d\bf P \it =\int \bf F~\it dt$$

時刻\(t_0\)〜\(t_1\)間の運動量変化を考えると、

$$\Delta\bf P\it =\bf P\left(\rm t_1\right)-\bf P\left(\rm t_0\right)$$

$$\Delta\bf P\rm =\int_{t_0}^{t_1} \bf F~\it dt \rm :=\bf I$$

運動量の変化は力積で表現できる。

位置情報は含まれない。

運動エネルギーの定義

運動方程式

$$m\frac{d^{2}\bf r}{dt^{2}}\it =\bf F$$

の左辺と\(\bf{r}\)か\(\bf{v}\)のスカラー積で意味のある物理量を作る

左辺と\(\bf{r}\)のスカラー積

$$m\dot{\bf v}\cdot\bf{r}\it=\frac{d}{dt}\left(m\bf v\cdot\bf r\right)\rm -m\bf v\cdot\bf v$$

このとき、

$$m\bf v\cdot\bf v\neq 0$$

であるから、意味のある物理量は定義できない。

左辺と\(\bf{v}\)のスカラー積

$$m\dot{\bf v}\cdot\bf{v}\it=\frac{d}{dt}\left(m\bf v\cdot\bf v\right)\rm -m\bf v\cdot\bf{\dot{v}}$$

左辺と右辺の第二項をまとめて整理すると、

$$m\dot{\bf v}\cdot\bf{v}\it=\frac{d}{dt}\rm\left(\frac{1}{2}m\bf v\cdot\bf v\right)\it=\frac{d}{dt}\rm\left(\frac{1}{2}\it mv^2\right)$$

$$\frac{d}{dt}\rm\left(\frac{1}{2}\it m v^2\right)\rm =\bf F\cdot\bf v$$

$$K:=\frac{1}{2}mv^2$$

を運動エネルギーと定義する。

運動エネルギーのシンボル\(\it K\)はkinetic energyに由来する。

$$\frac{dK}{dt}\it =\bf F\cdot\bf v$$

$$dK=\bf F\cdot\bf v\it dt=\bf F\cdot \it d\bf r$$

運動エネルギーの微小変化は微小距離でした仕事で表現できる。

角運動量の定義

運動方程式

$$m\frac{d^{2}\bf r}{dt^{2}}\it =\bf F$$

の左辺と\(\bf{r}\)か\(\bf{v}\)のベクトル積で意味のある物理量を作る。

ベクトルはかける順番によって符号が変わるので、出てきた情報の解釈が容易な左から作用させて考える。

左辺と\(\bf{r}\)のベクトル積

$$\bf v\it\times m\rm\dot{\bf v}\it=\frac{d}{dt}\left(\bf v\it\times m\bf v\right)\rm -\dot{\bf v}\it\times m\bf v$$

右辺第二項は

$$\bf v\it\times m\bf v\it =\bf 0$$

であるから、意味のある物理量は得られない。

左辺と\(\bf{v}\)のベクトル積

$$\bf r\it\times m\rm\dot{\bf v}\it=\frac{d}{dt}\left(\bf r\it\times m\bf v\right)\rm -\bf v\it\times m\bf v$$

右辺第二項は

$$\bf v\it\times m\bf v\it =\bf 0$$

であるから、

$$\frac{d}{dt}\left(\bf r\times\bf P\right)\it = \bf r\times\bf F$$

この式は原点0の周りの運動量のモーメントの時間変化は原点0の力のモーメントによって引き起こされるという因果関係を表している。

物理や数学では(位置ベクトル)\(\times\)(定義されたベクトル量)を「〜のモーメント」と呼ぶ。

このとき、

$$\bf L \rm :=\bf r\times\bf P$$

を角運動量と定義する。

$$\rm\dot{\bf L} \rm :=\bf r\times\bf F$$

$$d\bf L\rm = \dot{\bf L}\it dt =\bf r\times\bf F\it dt$$

角運動量の微少量は力積のモーメントで表現できる。

運動方程式が解析的に解ける現象

自由落下

$$m\ddot z =-mg$$

空気抵抗のある自由落下

$$m\ddot z =-mg-k\dot z$$

バネの運動

$$m\ddot x=-kx$$

振り子の運動

$$m\ddot{\theta}=-\frac{mg}{l}\sin\theta$$

ケプラー運動

$$m\ddot {\bf r}\rm =-G\frac{\it Mm}{r^2}\frac{\bf r}{\rm r}$$

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