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大学では物理学を学び、その魅力に惹かれる一方で、世の中には一人の著者によって書かれた統一的なものの見方をする物理の良質なテキストが不足していると感じた。

初学者が各分野の良質な教科書を一人で集め、そして独学で読み進めるのは並大抵の努力では出来ない(それをするのが学問だというのは、もちろん承知の上で)

せっかく興味を持って物理を勉強し始めたのに、分かりにくいために挫折するのはあまりに不本意。そんな状況を打破するために、自分が読んで納得のいく物理の解説を自分で書いてみることにした。

ネットで読める物理の解説メディア

専門書は誤植が多い。

内容が内容なので校閲の方が見逃してしまうのも無理はない。しかし、正誤表と見比べながら勉強するのを煩わしく感じる人もいるだろう。

教科書ごとに宗派が違うのも悩みの種だった。

ある程度、勉強が進んでくると自分の中でも理論の組み立て方に癖や好みが出てくる。ところが、初学者への配慮なのか、スタンダードとされている古い教え方を踏襲した解説サイトばかりで、現代の視点から公理的に再構築することを試みているサイトは見当たらない。

自分の、自分による、自分のための教科書

このまま研究を続けていくのか、それとも在野に降りて趣味で物理の勉強を続けていくのかはまだ決めていない。しかし、どのような選択を取ったとしても、自分の理解に即した論理体系でまとめたものは今後の自分にとって財産となるはずである。

公理的に理論を再構築

歴史の順番とは、すなわち人間が理解してきた順番である。

しかし、それゆえ場当たり的な記述になりがちであるのも事実だ。試行錯誤の過程は、科学史や研究に対する姿勢を学ぶ上では重要であるが、既存の物理を勉強し、次の研究に繋げるためのステップとしては遠回りである。

理論の発見者がその本質を理解してないこともある。

量子論の萌芽である光子仮説を提唱したアインシュタインは、量子力学の確率解釈が直感に反するとして受け入れなかった。晩年、思考実験により量子論の欠陥を鋭く指摘したEPRパラドックスは、ベルの不等式により局所実在論が破綻することが示されたことで棄却され、今日ではより本質的とされる量子もつれの概念の景気となる。これは”creative error”(創造的な誤り)であり、皮肉にも量子もつれの先駆者として歴史に名を連ねることとなった。

実験から得られた観測事実をもとに帰納的にモデルを組み立て、数理言語で表現していく。

それを元に推論を進めていくと、定量的に表現した数式がまだ観測されていない現象を指し示すことがある。実験で実証されるのには通常、何年もあとのことだ。事実、アインシュタインが一般相対性理論で予言した重力波の検出には、実に100年の月日を要した。こういったプロセスを経て、物理学という分野は発展してきた。

理論をより高度な体系に整理し直し、次のステップへと歩みを進める。

それには帰納法とは別のアプローチ、演繹法で理論を組み立て直す必要があるだろう。どの法則、物理量が公理になりうるか見極めて、基礎方程式から理論を再構築していくことを試みようと思う。