If you think you understand quantum mechanics, you don’t understand quantum mechanics.
Richard P. Feynman
量子力学のよくある説明として「波でもあり粒でもある」といったいい加減なものが流布している。
だが実際は、波や粒子といった物理的実態は存在せず、波動性や粒子性といった観測によって顕現する性質が観測対象のスケールによって見え隠れするだけである。
ここでは、従来の教科書のような前期量子論から深めていくやり方はしない。
現代の視点から、量子力学の全体像を公理的に俯瞰していくところから始めたい。
古典論の基本的枠組み
- 全ての物理量(physical quantity)は、どの瞬間にも、各々一つずつ定まった値を持っている
- 測定(measurement)とは、その時刻における物理量の値を知ることである
- ある時刻における物理状態(physical state)とは、その時刻における全ての物理量の値の一覧表のことである
- 時間発展(time evolution)とは、物理量の値が時々刻々と変化することである。
古典論はこの基本的枠組みを前提に運動方程式やマクスウェル方程式といった微分方程式を用いて、任意の時刻の物理状態を求めることが自然現象の説明であった。
量子論の基本的枠組み
- 全ての物理量が各瞬間瞬間に定まった値を持つことは一般にない。
- 物理量Aの測定(measurement)とは、観測者が測定値を一つ得る行為である。
- 物理状態(physical state)とは、物理量Aに対してそれを測定したときの測定値の確率分布{P(a)}を与えるものであり、物理量Aとは別のものψで表す。
- 系が時間発展(time evolution)するとは、測定を行った時刻によって、異なる確率分布{P(a)}が得られる
4はつまり、「測定値の確率分布の値が時々刻々と変化すること」である。
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